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受給世代のマネープラン<第3回>

<第3回>中高齢期の生命保険を見直そう

皆さんは、若いときにこんなふうに生命保険に加入されていませんか?
「ご自身に万一のことがあると、残された奥さんやお子さんが大変です。若いうちに加入すれば保険料も安く済みますよ」と生命保険の担当者に勧められて加入した人。または、「同期入社のAさんが保険に入ったので自分も同じ保険に入った」という人。ほとんどの人は、こんなきっかけで保険に加入しているのではないでしょうか。万一のときに残された家族の生活費を計算し、保険金額を決めた人は、ほとんどいないといってもよいでしょう。

一般的には、定年までの期間に万一死亡した場合を考慮して、60歳までは高額な保険金額が支払われる定期保険が上乗せされていて、60歳以降になると保険金額の少ない終身保険のみとなる「定期保険付終身保険」に加入している人が多いと思います。
たとえば、終身保険金額は300万円、60歳までの定期保険金額は3,000万円という定期保険付終身保険などがあります。

若くして亡くなった場合は、お子さんの教育費などが心配でしょうから、高額の保険が必要ですが、お子さんが高校や大学を卒業し、就職して自分の力で生活できるようになれば、あとは結婚式の費用を一部負担するぐらいでしょう。30歳くらいで結婚をして子どもができても、55歳ぐらいには、子どもは自立できているかと思われます。相続対策で加入している場合は別として、一般的には、55歳以降になると、高額な保障は必要ないケースが多くなると思われます。

STEP1 必要保障額を計算してみよう

それでは、中高齢期の死亡保障について、必要となる保障額がどのくらいになるのか、具体的な事例で見ていきましょう。
夫は1965年生まれの会社員で55歳、妻は1967年生まれの専業主婦で53歳。夫が2020年に55歳で死亡すると仮定した場合の必要保障額を検討します。

モデルの前提条件

(1)退職金額は、2,000万円と仮定する
中央労働委員会の平成29年賃金事情等総合調査によると、55歳時の製造業のモデル退職金は、大卒で2,254万円、高卒事務技術職で1,852万円、高卒生産労働者で1,689万円となっています。
したがって、死亡した場合の退職金を2,000万円とし、妻が53歳から92歳まで年1.5%の利率で運用しながら年金として毎月5万8,150円をうけとると仮定します。
(2)貯蓄額は、1,050万円と仮定する
平成28年国民生活基礎調査によると、50歳から59歳までの貯蓄額の平均は、1,050万円です。ここでは1,050万円は予備費として、そのまま貯蓄を継続すると仮定します。
(3)遺族厚生年金は、月額6万7,500円と仮定する
遺族厚生年金は老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3になります。したがって、ここでは老齢厚生年金のモデル月額9万円の4分の3の額である6万7,500円を遺族厚生年金の月額とします。
(4)老齢基礎年金は、月額6万5,000円とする
妻が65歳からうけとる予定の老齢基礎年金の額は、20歳から60歳まで40年間、国民年金に加入した場合のモデル月額である6万5,000円とします。
(5)中高齢寡婦加算は、月額4万8,758円とする
夫が被保険者期間中に死亡した場合、40歳以上で子のない妻には、65歳になるまで年額58万5,100円の中高齢寡婦加算が支給されます。
(6)妻が74歳までの支出は、月額16万1,995円とする
平成30年家計調査年報により、単身世帯の平均消費支出は月14万9,603円です。妻が74歳までの支出を月14万9,603円とします。
(7) 妻が75歳以上の支出は、月額21万円とする
75歳で有料老人ホームへ入居すると仮定して、関東圏の事例をもとに予想される老人ホームの月額使用料を以下のように16万円、その他の個人的費用を5万円とします。

*有料老人ホームに入居した場合の予想費用

内訳 金額(円)
食費 80,000
管理費(人件費、レクリエーション費等) 40,000
家賃 30,000
光熱費 10,000
老人ホームに支払う月額利用料 合計 160,000
介護保険の1割負担(介護度3の場合) 27,000
医療費 10,000
おむつ代 8,000
雑貨(お小遣い、ティッシュ、歯ブラシ等) 5,000
個人的な費用 合計 50,000
合計 210,000

以上を前提とした場合、万一のときに、残された妻が53歳から74歳までは、下表のとおり、収入が支出を上回り日常生活費には不足分は生じません。75歳で有料老人ホームに入居した場合は、75歳から92歳までは支出から収入を差し引いた不足分が発生する結果となりました。

したがって、夫が55歳で死亡したときの必要保障額は、夫の死亡時の一時的な費用や老後の特別な出費(有料老人ホームの入居時費用など)の備えなどを考えても、この事例の場合、数百万円~1,000万円程度あれば老後の生活は何とかできることになります。

つまり、子どもが独立しているモデルケースで言えば、中高齢期については、公的年金や企業からの退職金などの収入がある程度見込まれるので、万一の場合、妻一人の生活のための死亡保障は数千万円単位では必要ないケースが多いと思われます。


(単位:円(月額))

区分 内訳 53歳~59歳 60歳~64歳 65歳~74歳 75歳~92歳
収入 退職金 58,150 58,150 58,150 58,150
遺族厚生年金 67,500 67,500 67,500 67,500
中高齢寡婦加算 48,758 48,758 0 0
老齢基礎年金 0 0 65,000 65,000
合計 174,408 174,408 190,650 190,650
支出 食料費 36,378 36,378 36,378 0
住居費 18,268 18,268 18,268 0
光熱・水道費 13,109 13,109 13,109 0
家具・家事用品 4,780 4,780 4,780 0
被服・履物費 3,766 3,766 3,766 0
交通通信費 14,405 14,405 14,405 0
保健医療費 8,286 8,286 8,286 0
教養娯楽費 17,082 17,082 17,082 0
有料老人ホーム
月額使用料
0 0 0 160,000
その他 33,528 33,528 33,528 50,000
合計 149,603 149,603 149,603 210,000
不足額 19,350

(注)支出については、基本的な生活費のみを記載しています。個々の事情によって異なる子どもの結婚費用や家のリフォーム、海外旅行などの大型出費は考慮していません。

STEP2 死亡保障の見直し

そこで、中高齢期における生命保険(死亡保障)の見直し例を見ていきましょう。

見直し例

(その1)定期保障部分を減額して保険料を安くし、その分老後の資金を厚くする
若いときに高額な死亡保障がついている定期保険に加入している人が、死亡保障を減額すると、毎月の保険料額も減額されます。減額された分で自分たち夫婦の老後の生活に備えて、個人年金保険に加入するなど、老後資金対策を整えることをお勧めします。

(その2)定期保障部分を減額して保険料を安くし、その分民間の医療保険に入る
高額な死亡保障を減額することで、老後に向けて、ますます医療費負担が増えることへの対応として、自分たち夫婦の医療費対策で、民間の医療保険に加入するのもいいでしょう。

(その3)終身保障に代えて年金でうけとる
保険料の払い込み終了時に、終身保険や定期保険付終身保険に代えて老後の年金としてうけとることができる商品もあります。また、保険を解約し、戻ってきた解約返戻金を変額年金保険等に預け、年金としてもらう方法なども考えられます。

以上の見直し方法はほんの一例です。また、保険の見直し方法については、加入している保険会社や商品によっても異なります。どんな見直し方法があるのかについては、加入している保険内容を確認するか、保険会社に問い合わせるようにしましょう。